現代宗教2012

特集:大災害と文明の転換
国際宗教研究所 編

 2011年3月11日は日本の歴史の大きな転換点になるだろう。地震そのものと津波による災害に加えて、福島第一原子力発電所の事故が加わったことは被害をとてつもなく甚大なものとした。こうした災害は日本の人心に、そして日本の宗教にどのような影響を及ぼしているだろうか。物質主義的な現代文明や経済成長中心の人間観、世界観の空しさを、からだの芯から納得させるものではなかっただろうか。人間の弱さや傷つきやすさを見つめ、人間をはるかに超えたものの力を感得する経験がなかっただろうか。
 東日本大震災の後、宗教者や宗教団体に関わる報道が比較的多く見られた。被災地での支援活動でも宗教者、宗教団体が多くの貢献を行った。そしてこうした支援活動を宗教・宗派の枠を超えて協力して行おうとする試みも目立った。震災が人間を少し謙虚にさせたことと、宗教による支援活動が目立ったことはそれぞれ別のことであるかもしれない。だが、これらはともに「文明の転換」に関わるものと受け止めることはできないだろうか。
 2011年は日本で東日本大震災が起こったが、中東・北アフリカで広範な民主化革命が起こった年でもあった。アラブの民衆が独裁体制を倒し、新たな民主制への歩みを始めたという点で大きな変革である。
 そしてそれは、イスラーム世界が近代世界の中で西洋の支配圏から精神的に独立していく大きな一歩とも感じられている。民主制とイスラームの共存を目指す、自分自身が選び取る体制、イスラーム文明を強く意識した体制へと転換しつつあるのだ。
 このように考えてくると、一見、まったく関係がないかのように映る東日本大震災と中東・北アフリカの民主化革命は、「文明の転換」という点で共通の人類史的転換点を象徴する事柄と見ることができるかもしれない。相互の関連性を問うことは無謀であるかもしれないが、まったく無益なことと断定することもできないだろう。宗教を通して現代世界のあり方を考え、現代人の生き方を考えようとする『現代宗教』の意義があると考えるからである。

A5判 並製 352ページ
定価 (本体2,200円+税)
ISBN978-4-87023-636-3

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〈目次〉

現代宗教2012〈目次〉

対談 〝フクシマ〟にみる文明の転換
●玄侑宗久/島薗 進

ポニョの海の中と外─「初源神話」の創出
渡辺和子
大震災は〈神義論〉を引き起こしたか
藤原聖子 
 随筆 宗教の救済力はどこにあるか
金子 昭 
被災地宗教者の活動と後方支援の輪
稲場圭信 
震災以後の宗教情報─メディア報道/論説の内容と分析
碧海寿広 
東日本大震災被災地支援における仏教者の活動について
吉水岳彦 
3・11 二一世紀の置書事始
岡田真美子 
震災死者と宗教─インドネシア・スマトラにおける集団埋葬の事例から
木村敏明 
民主化ドミノと脱宗教という幻想
塩尻和子 
民主化とイスラーム─「アラブの春」がもたらした文明の岐路
飯塚正人 
宗教的マイノリティからみた一月二五日革命─コプト・キリスト教徒の不安と期待
岩崎真紀 
 随筆 東日本大震災から宗教と文明のこれからを考える
中野 毅 
記憶と人をつなぎ続ける難しさ─かつての被災地の事例から
三木 英 
 コラム 東日本大震災と日本在留外国人
アンドリューズ・デール 
山田のご縁は支援の動機になるか─神道文化が新たな絆を生み出す可能性
板井正斉 
 随筆 菅直人氏の四国遍路
星野英紀

2011年の宗教動向(2010年10月~2011年9月)
【国内】日本社会と「宗教」をめぐる区切りと兆し
  ─オウム裁判終結、「君が代」起立問題、「宗教情報ブーム」のゆくえから
塚田穂高 
【海外】大変動の中の国際宗教
  ─中東政変と東日本大震災を軸として
藤野陽平・平野直子